2019年4月より順次施行される「働き方改革関連法」。
少子高齢化に伴う労働力人口の減少や、長時間労働、非正規と正社員の待遇差など、労働環境の改善を目的に施行されるものです。
「働き方改革」がパートタイムで働く人にどのような影響があるのか、まとめてみました。
働き方改革の目的とは
少子高齢化の影響で、日本の生産年齢人口(15~65歳未満)は1995年をピークに減少し続けています。2018年は7,484万3,915人と、はじめて全体の6割を切りました。
出典:総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数のポイント」(平成30年1月1日現在)
このままの状態が続けば、いずれ日本の財政は破たんする恐れがあります。
そこで政府はこの問題を解決するため、労働者が多様な働き方を選択できる社会を実現し、一人ひとりがより良い将来の展望を持てるように「働き方改革」を進めています。
簡単にいえば、育児や介護などで長時間勤務ができない女性や、働く意思はあるのに就労場所がない高齢者などに、気持ちよく働いてもらえる労働環境を提供し、所得税を払ってもらうことで日本の財政を維持しようというのが狙いです。
2019年4月から何が変わるのか?
時間外労働の上限規制を導入
時間外労働(いわゆる残業など)の上限が、月45時間、年360時間を原則とし、特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度に設定されます。
※中小企業は、2020年4月1日~実施。
年次有給休暇の確実な取得が必要
10日以上の年次有給休暇が付与されるすべての労働者に対し、最低でも毎年5日間以上の有給休暇を、時期を指定して与えることが義務付けられました。
パートの有給休暇については以下の記事で詳しく解説しています。
正規、非正規間の「不合理な待遇差」を禁止
同一企業内において、正規労働者と非正規労働者(パート、派遣など)との間での不合理な待遇差(基本給、賞与など)が禁止されます。
つまり、同じ会社で同じ仕事をしているにも関わらず、正社員とパートとで基本給が違うといった待遇差がなくなります。
※中小企業は、2021年4月1日~実施。
「働き方改革」がパートで働く人に与える影響
パートの雇用が増える?
残業時間の上限が設けられたことで、正社員やフルタイム労働者の労働時間が短縮されます。
これにより、今後ますます業務切り分けが進み、パートタイム労働者の雇用が増えるかも知れません。
パートの有給休暇に対する意識が向上
「パートだから有休がない(あっても取りづらい)」と考える労働者や企業は、いまだに多いのが実情です。
しかしながら今回の法改正により、年次有給休暇が10日以上の労働者に対し年5日以上の有給休暇を与えないと、企業に罰金が課せられます。
働き方改革によって、パート労働者の有給休暇に対する意識が向上することが期待されます。
待遇面が改善される
社員並みの働きをしているにも関わらず、パートだからと低い時給で我慢している方。
これからは「同一労働同一賃金」により、正社員と同様の待遇に改善されていくでしょう。
残業時間の短縮で賃金面にデメリットも
最初から残業ありきで生計を立てている人には、残業時間が短縮されることで収入が減ってしまう可能性があります。
まとめ:すべての人が気持ちよく働ける社会に
働き方改革により、これまで長時間労働を強いられてきた人は、時間外労働が短縮されます。社員並みに働いているのに低い賃金で我慢してきたパートの方は、時給が上がるかも知れません。
また、パートだからといって有休の申請を諦めていた人は、確実に有休申請ができるようになります。
まだまだ改善の余地がある働き方改革ですが、これまで労働市場にいなかった女性や高齢者の方にとっては、働くきっかけにつながる可能性があります。
改めてこれからの働き方について、考えてみてもいいかも知れませんね。